基本要項改定第一次案に対しての意見表明について

 私達、関西社協コミュニティワーカー協会は、2024年4月に公表された「基本要項改定」第一次案に対して下記のとおり、意見表明をいたします。

         基本要項改定第一次案に対しての意見表明について

2024年7月23日        
 関西社協コミュニティワーカー協会  

 私たち、関西社協コミュニティワーカー協会(以下、関コミという)は、新基本要項改定(以下、92年要項という)の中で、「住民主体の原則」議論において、関西圏の社会福祉協議会(以下、社協という)職員の呼びかけにより、「新基本要項を考える社協職員のつどい」を2回開催(1990年11月、1991年9月)するなどの運動を展開し、「住民主体」の明記、検討期間の延長を求め、社協職員の意見を尊重するようにと意見を発信し、その後、社協職員による職能集団として1994年1月に設立した自主組織です。
 関コミは、設立後一貫して「住民主体」の社協活動をめざし、地域福祉の発展と向上を図ることを目的に、社協ワーカーの専門性と社会的地位の向上を図るため、「つながり」「学び」「運動する」を軸にした社協職員による主体的及び自主的な活動を行っています。
 今回、全国社会福祉協議会(以下、全社協という)が92年要項から30年を経て、基本要項の改定の検討が行われ、関コミでは、2023年11月から全社協が社協向けにホームページで公開した資料等をもとに、役員、企画メンバー、全国の社協職員有志と検討、議論を交わしつつ、会員からの意見集約も行ってきました。
その経過を踏まえてこの度2024年4月に公表された「基本要項改定」第一次案に対しての意見を以下の通り表明します。

           「基本要項改定」第一次案に対しての意見表明

(1)この時期に改定する意義についてより一層の丁寧な説明を求めます。

 92年要項の「どこが時代に合わなくなっているか」に触れていません。全社協は、92年要項では、事業型社協を唱え、規模拡大を前提としており、全国的に社協の人員体制、予算規模も含め増大しています。92年要項をどうのように評価し、次の段階としてどのように基本要項改定を行うのかの説明が不明確です。
 また、今後の社協は、少子高齢社会、人口減少時代において、事業規模が縮小している社協もあるという、状況について何も考慮されていません。これからの時代を見据え、今一度、改定する意義について、より一層の丁寧な説明が必要です。

(2)今後10年単位で基本要項改定を前提としていることに反対します。

 人口減少時代において、社協が一律に機能拡大したりする時代から、社協によって機能の比重のかけ方が多様化する時代に既に入っている状況において、10年単位で見直すということは、基本要項を矮小化し「指針」的な位置づけとなってしまいます。基本要項は、全国の社協役職員が目指すべき、社協の姿である「社協における憲法」であり、それは普遍的で長期的な視点に立った要項であるべきです。
 また、国際児童年や国際障害者年から子どもの権利条約、障害者の権利条約へと普遍的な人権モデルへとつながっていますが、30年を経てなお達成に向けた過程にあり、地域福祉の向上による社会の発展には、すべての国民による不断の努力によるため相当の時間を要します。当面の福祉問題や政策課題に捉われた10年単位の見直しではなく、SDGs、ダイバーシティなどの新たな価値観を反映し、将来構想を示した「社協の憲法」であるべきです。

(3)基本要項は、すべての社協役職員にとっての活動原則であるべきです。

 基本要項は、「社協の憲法」であり、活動原則であるべきです。その意味では、基本要項は、社協の使命と活動原則について、社協の役職員のみならず、関係者そして住民に理解できる内容とすべきです。
 また、社協によって機能の比重のかけ方が多様化しており、住民主体の原則に立った社協の機能(事業)のあり様を、社協それぞれの判断に委ねるためにも、社協の使命、活動原則を中心とした基本要項であるべきです。
 社会福祉法に規定された社協は、他の社会福祉法人とは異なる公益性の高い民間組織であり、経営方針については、別途規定するという考え方には賛同します。

(4)「住民主体」とそれを実現する方法の組織化機能の重視を打ち出すべきと考えます。

 今日の社会は、社会的排除と孤立、格差が進展し、さらには福祉サービスの利用者を消費者としての客体化を促進させてきた、政策不備の一面があります。それに伴い、つながりの再構築が政策的に言われはじめ、地域福祉の政策化が進んでいます。社協は、「つながりを構築」する主体ではありません。住民一人ひとりの権利実現のため、地域住民が共に生きる「私たち」として認め合い、地域住民自身が、「つながりの再構築」を「私たち」の手で試行錯誤する過程を通じて主体形成をしています。そして政策不備を超え、「正す力」をつけることが住民自治力の向上であり、それらをもって「住民主体」という言葉で表し、それが、原則であると、私たち社協職員は信念をもって活動しています。地域組織化も、地域福祉活動計画も、すべてがここに帰結していると確信しています。
 社会問題認識に立ち、今回の基本要項は、改めて社協の一丁目一番地、すなわち「住民主体」とそれを実現する方法としての組織化機能の重視を、打ち出すべきで、1962年基本要項から引継ぐべきは、住民主体が意味すること、それを実現する組織化機能の再強化です。

(5)行政とのパートナシップに関する記載内容の再考を求めます。

 地域福祉の施策化に伴って、第一次案では、「行政とのパートナーシップ」が強調され、「社協はこれまで以上に自治体とのコミュニケーションを深め、パートナーとして連携・協働していくことが求められます」とありますが、こうした表面的な表現では、真意が伝わらず、都合よく行政に使われることが危惧されます。「住民協議体と住民ニーズに立脚した社協は、行政への対等な提案ができるだけの力を高めることで、地域福祉を推進するパートナーとして連携・協働していく」「その不断の努力と戦略が必要不可欠だ」ということの言及が必要です。 

(6)基本要項の改定作業スケジュールについて再考を求めます。

 2024年元日に発災した能登半島地震では、今なお、被災された方や避難された方に寄り添った支援や、全国の各ブロックからも職員派遣が継続されており、そのような非常事態の中、当該の社協では役職員が活発な議論を行う時間を割くことは困難であると考えます。
 第一次案の意見集約にあたっては、全社協主催のフォーラムが仙台、東京、岡山の3会場で実施されましたが、全国の社協役職員一人ひとりが、基本要項の議論を通じて、社協の使命、社協の活動原則を考えるきっかけとなっています。基本要項改定後においても「我が事」として捉えることが重要です。
 このようなフォーラムを全国ブロック単位で開催し、社協役職員が意思を述べる機会を増やし、更なる意見集約と併せて、全社協からの丁寧な説明の機会を作るとともに、都道府県社協が中心となった学習の場をつくり、第二次案が出された以降も十分な議論の時間を確保していくなど、“2025年”にこだわらないスケジュールの見直しを求めます。

最後に

 全国の都道府県及び市区町村社協は、このたびの基本要項改定を契機に、「社協の固有性とは何か」「住民主体とは何か」、「住民主体を標榜する社協職員に求められる専門性と何か」等を改めて考え、話し合う機会となっています。
 このような機会を一過性に終わらせず、今後も、社協が社協たる所以について学び合い、共有し合う機会を様々な形で、各都道府県単位で折に触れて持ち続けることを提案します。

「社協は地域における住民組織と公私の社会福祉事業関係者等により構成された組織の一員として、住民主体の原則に基づき、地域の福祉課題の解決に取り組み、誰もが安心して暮らすことのできる地域福祉の実現をめざしていく」ことを常に意識し、目指しながら、私たち関西社協コミュニティワーカー協会は、引き続き職能集団として行動していきます。

 

                                関西社協コミュニティワーカー協会
                                会 長  髙 橋 俊 行

 
 この表明は全国社会福祉協議会だけでなく、都道府県社会福祉協議会及び指定都市社会福祉協議会に向けても通知いたします。