基本要項2025第二次案に対しての意見表明について

 私達、関西社協コミュニティワーカー協会は、基本要項2025第二次案に対して下記のとおり、意見表明をいたします。

「基本要項 2025」第二次案に対しての意見表明


 私たち、関西社協コミュニティワーカー協会(以下、関コミという)は、社会福祉協議会基本要項 2025 第二次案について、以下のとおり意見表明を行います。関コミとして第一次案に対して 7月に表明した意見に検討を加えたものであることを申し添えます。 

1.基本要項の位置づけについて
 「基本要項は、社協の憲法である」という立場から、10年後の改定を前提とした「指針」と位置付けたことに反対する。地域社会を取り巻く状況をふまえ地域福祉の重要性が増すなか、基本要項は地域福祉推進を使命とする社協のあり方、その存在意義や価値などの普遍的な固有性を中心に示すべきである。また、社協の機能については、地域の実情に応じた活動を推進していくために社協の判断に委ねるべきという立場から記載は不要である。

2.改定スケジュールについて
 今回の改定は、そもそも基本要項の意味・位置づけが不明確なまま進められている。30年ぶりの改定であればこそ「社協の歴史的経緯、社協とは何か、基本要項とは何か」など議論の前提となる事項についての社協役職員の共通認識が重要である。しかし、この間の議論を見る限り、充分な認識が得られているとは言いがたく、学び合いのなかで議論を深めるプロセスが必要である。
 能登半島地域への配慮や、地域単位での議論の場が不足している状況をふまえ、協議、議論を尽くした改定となるようスケジュールの再考を強く求める。

3.「住民主体」の認識について
 前文に「昭和37(1962)年に社会福祉協議会基本要項、平成4(1992)年新・社会福祉協議会基本要項が策定さ れたが、これらは一貫して「住民主体」を掲げ」とあるが、実際には新・基本要項改定時には第一次案及び第二次案において「住民主体」を削除した重大な経緯を忘れてはいけない。理念として継承された「住民主体」は、改定期間を延長しながら全国の社協職員の運動と熟議によって獲得した社協の核心をなすものである。
 こういった歴史的な認識にたったとき、「住民主体」の意味を理解・認識できるような記載が必要である。住民とは「権利の主体」「生活者の主体」「自治の主体」であり、地域社会の様相に変化が生じている現代においても「住民主体」の本質は不変である。住民主体による地域福祉の推進そのものが住民自治であり、特に「住民や地域の関係者の~」といったような住民を客体化するような表記ついては見直しを強く求める。

4.組織化について
 「住民活動基本の原則」とあるが、「組織化の原則」とすべきである。社協は、単に活動・事業を住民の自発的な思い等を待つだけではなく、地域住民が気づきを得るための学び合いや働きかけ、協議や合意形成の積み重ね、主体形成や組織化を進めるプロセスこそを大切にしてきた。思いを共有し、私たちの問題にしていく「組織化」こそが地域共生社会における要であり、住民活動や取組はその結果であると捉えるべきである。それが、社協が住民とともに進める地域づくりである。
 地域では、地縁の弱まりが見られる一方で新たな自分事のテーマに即した多様な組織化が展開されている。社協としてあらためて「組織化」の意味を問い直し、取組を強化していけるよう原則とすべきである。

5.社協の専門性について
 社協固有の専門性は、4に示すような地域や当事者の組織化を大切にした地域づくりにあり、それを基盤にしてこそ、個の問題への対応が可能となる。
 「個別支援と地域づくりの一体的展開」については、説明も不十分であり原則として取り上げるには議論が不足しており、個別支援のための地域づくりを強く連想させる懸念がある。あえて言うなれば「地域づくりを基盤とした個別支援との一体的展開」ではないか。また、その意味で社協の専門性における「コミュニティワーク」の重要性についても、あらためて認識を持つべきである。

6.今後ついて
 基本要項を日々の実践に引き寄せながら、考え、確認する機会を全社協は、継続的に設けるべきである。この間の議論において、社協役職員自身が基本要項の内容について難しいとの感想を述べている現実がある。今回の基本要項発出後に、社協のあり方を学び合う土壌を全社協も含め全国の社協をあげてつくっていくべきである。
 また、基本要項は、社協職員、役員だけのものではなく、住民のためのものであり、併せて公私関係機関、団体に社協組織の使命を伝えるものでもある。そのためにも、特に「住民主体」「組織化」「社協の専門性」などについて丁寧な説明が必要であり、議論のプロセスや意図が窺えるような記載とすべきである。

2024年12月15日     
   関西社協コミュニティワーカー協会
   会長 中 西 知 史

基本要項2025第二次案に対しての意見表明について(PDF)

 

 関西社協コミュニティワーカー協会は、1992年の新・基本要項改定の動きの中で、「住民主体の原則」が削除された案が示されたことをきっかけとして「住民主体の原則」議論を関西圏の社会福祉協議会職員が呼びかけ、「新基本要項を考える社協職員のつどい」を2回開催(1990.11、1991.9)するなどの運動を展開し、「住民主体」の明記、検討期間の延長を求め、社協職員の意見を尊重するようにと意見を発信し、その後、社協職員による職能集団として1994年1月に設立した自主組織です。
 関コミは、設立後一貫して「住民主体」の社協活動をめざし、地域福祉の発展と向上を目的とし、社協ワーカーの専門性と社会的地位の向上を図るため、「つながり」「学び」「運動」を軸に活動をしています。今回の基本要項改定では、昨年11月から会員間で、オンライン・参集型のミーティングを開催し、第一次案に対して意見表明を行ってきました。また基本要項改定についてセミナーを行った団体への協力を行うなどの活動を行っています。
 このような機会を一過性に終わらせず、今後も、社協が社協たる所以について学び合い、共有し合う機会を様々な形で、持ち続けていきます。